耳鼻咽喉科・気管食道科の診療内容について|神奈川県川崎市の総合病院 太田総合病院

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耳鼻咽喉科・気管食道科の診療内容について

診療内容及び特色

副鼻腔炎とは?

副鼻腔とは鼻の周りにある空洞で鼻の働きを補助する場所です。
つまり温度・湿度の調整を補助したりする空調器官と考えて下さい。

鼻の役割

1.匂いを嗅ぎます。
2.呼吸をする際の空気調節をします。温度・湿度の調整、ほこりなどの濾過、感染防御をしています。この作用がなくなると鼻の乾燥、炎症を起こしやすくなります。
3.音の共鳴。鼻閉があると鼻づまり声となります。

そして副鼻腔炎とは、この副鼻腔という空洞に炎症を起こして膿がたまってしまったりするもので、いわゆる蓄膿症と言われる病気です。
原因としては、感染・アレルギー・鼻茸・粘膜機能障害・鼻中隔弯曲症(真ん中にある軟骨や骨が曲がっている病気)など色々なものが原因となります。

鼻ポリープって何?

鼻ポリープとは、粘膜にできる炎症性のできもので鼻茸ともいわれるものです。これができていると鼻のとおりを悪くし、鼻閉を起こしたりします。そして鼻と副鼻腔の交通を妨げ副鼻腔炎の原因となってしまいます。

症状・診断情報

症状は・・・

鼻がつまる、鼻汁がでる、鼻汁が口に落ちてくる(後鼻漏)、頬が痛い、眼の奥が痛い、歯が痛い、頭痛、匂いがしない・・・と様々な症状を起こします。
鼻閉により口呼吸・睡眠障害を起こすこともあります。
鼻の奥よりノドへ鼻汁が落ちてくるものを後鼻漏と言い、ノドの炎症も起こすことがあります。
副鼻腔炎が悪化すると場合によっては眼の病気(眼窩蜂巣織炎、腫瘍)や頭の病気(脳腫瘍、髄膜炎)を起こすこともある怖い病気でもあります。

検査は・・・・

鼻のなかを内視鏡というカメラで見たり、X線検査、CTスキャンなどを行い調べます。
CTとは断層写真のことで空気は黒く写ります。
副鼻腔は空洞ですので黒く写るのが正常なのですが、灰色に変化していると慢性副鼻腔炎となっているのがわかります。
また症状によっては色々な検査が加わります。
嗅覚障害に対して注射による嗅覚検査や季節性のある鼻閉などに対してのアレルギー検査がそうです。

難治性副鼻腔炎

1.好酸球性副鼻腔炎

副鼻腔粘膜に著明な活性好酸球浸潤した副鼻腔炎であり、従来の副鼻腔炎にくらべ、病変が篩骨洞優位に出現するために早期に嗅覚障害が出現しやすく、しばしば喘息を合併いたします。現在、難治性副鼻腔炎に属し、ESSを施行しても従来の副鼻腔炎に比べ予後が悪いです。
しかし、積極的に手術療法を行い、術後ステロイドの投与、自宅での生理食塩水にての鼻洗浄や抗アレルギー薬を使用し、術後1年では嗅覚障害をはじめとする鼻症状の改善を維持しております。但し、再燃の危険性があるので定期的な外来にての経過観察が必要になります。

2.慢性副鼻腔炎の再発例

最近では、内視鏡下鼻内手術を施行し、その後再燃を起こし手術治療の対象になっている症例が増加しています。再手術例は鼻副鼻腔形態異常や出血しやすいなど、初回例に比べESS手術の難度が高くなります。
そのため、危険を回避するためにナビゲーションシステムを導入し、円滑な手術操作ができるようになっております。現在、臨床的症例を積み重ねて、再手術症例の因子を検討しています。

治療法

治療は、粘膜の炎症をとり、鼻汁や膿をなくすようにします。内服治療、局所処置・吸入治療、手術的療法などがありますが、ポリープがあり病変が高度で内服治療では治らないと判断されると手術療法が選択されます。そのためポリープが大きくなってしまう前に炎症をとるようこまめな通院が必要となります。

内服治療

1. 抗生物質・・・少量長期投与で細菌の急性憎悪を抑制
2. 粘液溶解剤、消炎酵素剤・・・粘膜の炎症をなくさせます
3. 抗アレルギー剤・・・アレルギーによる炎症をなくします

局所処置・吸入治療・・・

炎症のある粘膜に直接霧状の薬をつけたり、粘性鼻汁をなくすようにします。

内服治療、局所処置・吸入治療を1~3ヶ月行い病変に変化がない場合、手術的療法(慈大式内視鏡下鼻内副鼻腔手術)が選択されます。
鼻内と副鼻腔との交通を大きくつける事で膿をなくして副鼻腔内の病変を改善させるのです。

実際に手術を行う際には、鼻科手術においては鼻副鼻腔専門医師が多数おり、安全対策として手術前に手術方法・術中の留意点などを医局員全員にてカンファレンスを行い、議論した上でより安全な手術が施行できるようにしております。
また当院では患者様の疼痛軽減のため、ほぼ全例が全身麻酔にて手術を行い、出血軽減のために低血圧麻酔とするようにしております。さらに手術後は以前にはガーゼ挿入による圧迫止血がなされ、これによる苦痛が多大にありましたが、現在はガーゼ挿入をしない形式で止血するようになり、術後の苦痛を軽減することができております。

治療成績

1.内服的治療

当院では、2002年1月から2003年12月まで鼻症状を主訴に来院された患者様で副鼻腔CTにて副鼻腔炎を認め自覚症状のある方に対してマクロライド少量投与を8週前後行い副鼻腔炎の改善の有無を評価いたしました。マクロライド投与開始した371人のうち、約8週後に再度CTを施行できた229例についての評価を提示いたします。

①治癒:18.2%、②改善:48.6%、③不変:23.1%、④悪化:10.1%
と改善率は66.8%(①+②)でした。(効果判定基準は島田らの分類で行いました。(2000年耳鼻咽喉科展望より)
また治癒と改善を治癒群、あるいは不変と悪化を非改善群とし、影響を及ぼす要因についてそれぞれ多変量解析(二項ロジスティック回帰分析)をおこない検討しました。

解析した項目
・年齢 ・性別 ・喫煙歴 ・喘息の有無・アレルギー性鼻炎の有無
・抗アレルギー剤併用内服の有無
・鼻茸の有無 ・CTスコア(治療前)・マクロライド内服日数
・マクロライドの種類・鼻中隔彎曲症の有無

その結果、治癒群では
・女性 p=0.000 3.074(1.716-5.506)
・アレルギー性鼻炎なし p=0.000 0.346(0.192-0.625)
・50歳以下 p=0.001 0.356(0.196-0.647)
・治療のCT陰影が軽度 p=0.001 0.790(0.790-0.904)
・鼻茸なし p=0.009 0.068(0.009-0.518)
有意確率 オッズ比(95%信頼区間)

非改善群では
・鼻茸あり p=0.000 3.780(2.018-7.083)
・治療前のCT陰影が軽度 p=0.001 0.735(0.663-0.814)
有意確率 オッズ比(95%信頼区間)

このように有意差がでました。

結論として、
①鼻茸症例はマクロライドの効果が低く、手術加療が必要である。
②マクロライドにて鼻閉症状は著明に改善した。
③画像のみでは治療経過を予測できない。
と考えました。

2.手術的治療(内視鏡下鼻内手術)

また、上記229人のうち手術を施行し術後1年後に鼻内所見、自覚症状、副鼻腔CTにて再評価できました患者さんに対しても検討を行いました。
①治癒:21.8%、②改善:50.9%、③不変:12%、④悪化:15.4%
と治癒群は72.7%(①+②)でした。

手術手技を含めた評価も行いました。
手術手技の評価方法は、篩骨洞の残存蜂巣の有無を下記5段階に評価し、
・0 蜂巣の骨を全く認めない
・1 4mm未満の骨の残存を認める
・2 4mm以上の骨残存あるが連続性なし
・3 4mm以上骨残存かつ連続性あり
・4 蜂巣の完全残存
前篩骨洞上/前篩骨洞下/後篩骨洞の3部位に分けて計測しました。
CT水平断において、眼球の虹彩レベルで上下に分け、12点満点として評価を行いました。

手術手技を含めた評価の結果、術後治癒率が高いのは、
・女性 p=0.001 3.242(1.606-6.543)
・治療前のCTが軽度 p=0.007 0.831(0.727-0.950)
・45歳以下 p=0.010 2.556(1.252-5.221)
・骨残存が軽度 p=0.034 0.556(0.330-0.959)
有意確率 オッズ比(95%信頼区間)

術後非改善群は、
・骨残存が高度 p=0.000 2.480(1.589-6.496)
・治療前のCTが軽度 p=0.000 0.759(0.888-0.862)
・好酸球率 ≧ 9.0% p=0.008 3.411(1.359-8.498)
・喘息 p=0.040 2.195(1.035-4.655)
有意確率 オッズ比(95%信頼区間)

このように有意差がでました。
結論として、
①鼻閉症状は手術にて著明に改善した。(95%)
②画像評価のみでは術後の改善は予想できない。
③手術効果を左右するのは術者の手術手技だけではない。
④女性、45歳以下、骨残存軽度症例は治癒しやすい。
⑤骨残存高度、血中好酸球率高値、喘息合併症例は治癒困難。
と考えました。

手術件数

当院は、内視鏡下鼻内手術の手術件数も多く、2009年度は年間335件を施行しております。 今後も内服治療や安全な手術的治療の研究を行い、適切な検査・治療、適切な情報を提供できるようにいたします。

手術件数当院は、内視鏡下鼻内手術の手術件数も多く、2009年度は年間335件を施行しております。 今後も内服治療や安全な手術的治療の研究を行い、適切な検査・治療、適切な情報を提供できるようにいたします。
鼻茸摘出術鼻中隔矯正術鼻甲介切除術
(単独)
内視鏡下鼻内手術翼突管神経切断術眼窩壁骨折整復術
2009年 5 217 16 335 34 3
2010年 5 266 13 403 58 2
2011年 5 252 10 389 78 2

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